研究施設の現状と将来計画 315
8-4 機器センター
機器センターは,汎用機器の維持・管理・運用と,所内外の施設利用者への技術支援を主な業務としている。この他, 研究所内外の共同利用者と協力して,機器センターの機器を利用した特色ある測定装置の開発とその共同利用も行っ ている。機器センターでは,化学分析機器,構造解析機器,物性測定機器,分光計測機器,および液体窒素・ヘリウ ム等の寒剤供給装置等の多様な機器の維持・管理を行っている。また,機器センター所有の多くの機器を大学連携研 究設備ネットワークに公開しつつ,この事業の実務を担当している。機器センターには,センター長(併任)のほか に9名の専任技術職員と2名の事務支援員が配置されている。
分子研の明大寺地区では平成21〜22年度に実験棟の改修が行われ,平成23年3月の工事終了後,その他の建物 も含めて全面的な部屋割りの見直しが行われた。機器センターでも装置の配置を抜本的に見直し,極低温棟・レーザー センター棟1階・実験棟地下・南実験棟への集約化を図った。特に,南実験棟 S 101 号室には,主に分光計測関係装 置を集中して配置した。さらに南実験棟には所外利用者のための待合スペースも整備した。
平成23年11月には,明大寺地区のヘリウム液化装置の新規設置が行われた。以来,順調に稼働しており,ようや くにして余裕のあるヘリウム供給体制が整備された。ただし,今般の世界的な供給ひっ迫に伴ってヘリウムの新規購 入が極めて困難になっていることから,利用後の回収を徹底させることが必要である。また,昨年度末に特別な予算 的措置をもって,有機微量元素分析装置の新規交換,S QUID 極低磁場オプションならびに E S R .C W -E ND OR オプショ ン導入等を行った。
機器センターは,共同利用として前期・後期に分けて年二回の施設利用を受け付けている。平成24年度の所外施 設利用件数は平成25年2月末現在で 95 件である。平成22年度は 60 件,23年度は 81 件であったので,増加傾向に あることがわかる。
研究所全体として大規模装置を効率的に運用する必要性の高まりを受けて,機器センターにおいて,比較的汎用性 の高い装置群を集中的かつ経常的に管理することとなった。その一環として,平成23年度末に終了した「ナノテク ノロジーネットワーク事業」で運営されてきた 920.MHz.NMR および高分解能電子顕微鏡,さらに,X線光電子分光器, 集束イオンビーム加工装置,走査型電子顕微鏡の計5装置が,機器センターに移管された。「ナノテクノロジーネッ トワーク事業」に関しては,その発展である「ナノテクノロジープラットフォーム事業」が平成24年7月より開始 された。分子研において当事業を運営する母体は分子スケールナノサイエンスセンターであり,その中に設置された
「ナノプラットフォーム室」が実務を担当している。来年度にはナノサイエンスセンターが改組されるのを受けて, ナノプラットフォーム室は機器センターに移設されて業務を継続する予定である。
以上の状況に対応して,研究所外のコミュニティの方々から広くご意見を頂く必要性がますます増加するものと考 え,機器センターの運営委員会が現在までは所内委員のみで構成されていたものを,所外委員も含めた構成に変更し た。当会議では,施設利用の審査を行うほか,施設利用の在り方やセンターの将来計画について,所内外の意見を集 約しつつ方向性を定める。
機器センターの今後であるが,国家全体の厳しい財務状況を考慮すると,汎用機器の配置や利用を明確な戦略のも とに進めることが不可欠となるのは言をまたない。実際,現在の所有機器の多くが10年以上前に導入されたもので 老朽化が進み,かなり高額の修理を頻繁に実施せざるを得ない状況になっている。全てを同時に更新することは予算 的な制約からほぼ不可能であり,緊急性・使用頻度を考慮して順次更新を進めるプランを策定して,分子研全体の設 備マスタープランへ組み込む必要がある。この点で,どのような機器ラインアップを維持するか再検討すべきであり, 機器の利用形態を考慮すると,次の3つのタイプに階層化することが有用と思われる。
316 研究施設の現状と将来計画
1).比較的多数のグループ(特に研究所内)が研究を遂行していく上で不可欠な共通基盤的機器。これらの維持は,特 に人事流動の活発な分子研において各グループが類似の装置をそれぞれ新たに用意する必要がない環境作りの面 で,最重要である。所内利用者には利便性を図りつつ相応の維持費負担をお願いする必要がある。また,オペレーター として,技術職員ばかりでなく技術支援員等で対応することも検討する。一方,使用頻度や維持経費の点で負担が 大きいと判断されたものは見直しの対象とし,所内特定グループや他機関へも含めた移設などにより有効に利用し てもらうことも検討すべきである。
2).当機器センターとしての特色ある測定機器。汎用機器をベースとしつつ改良を加えることによってオリジナル性の 高いシステムを開発し,それを共同利用に供する取り組みを強化すべきである。その際,技術職員が積極的に関与 して技術力を高めることが重要である。所外の研究者の要請・提案を取り込みつつ連携して進めるとともに,所内 研究者の積極的な関与も求める。当センター内のみならず,例えば,U V S O R やレーザーセンター等と共同して取 り組むことも効果的と考えられる。所内技術職員の連携協力が技術を支えるのに不可欠である。コミュニティ全体 から提案を求める体制づくりも必要となろう。また,各種プロジェクトに適当な装置の時間貸しをすることによっ て維持費の一部を捻出するなどの工夫も必要であろう。
3).国際的な水準での先端的機器。分子科学の発展・深化を強力に推進する研究拠点としての分子研の役割を体現する 施設として,U V S O R や計算科学研究センターと同様に,機器センターも機能する必要がある。高磁場 N M R 装置 や E S R 装置は,国際的な競争力を有する先端的機器群であり,研究所全体として明確に位置付けを行い,利用・運 営体制を整備することによって,このミッションに対応すべきである。国外からの利用にも対応するため,技術職 員には国際性が求められる。2) と同様に,所外コミュニティからの要請・提案と,所内研究者の積極的関与が不可 欠である。特に,新規ユーザーの開拓は,分子科学の新領域形成へと繋がると期待されるものであり,これまで分 子研との繋がりがあまり深くはなかった研究者層・学協会との積極的な連携を模索することにも取り組む。先端的 機器は不断の性能更新が宿命であるが,全ての面でトップたることは不可能であるので,意識して差別化を行い, 分子研ならではの機器集合体を構成することに留意する。